歯ぎしり・食いしばりに有効なボツリヌストキシン製剤療法
ボツリヌストキシン製剤療法は、ボツリヌス菌が生成するボツリヌス毒素から抽出した特定のたんぱく質を体内に注入することで、歯ぎしり・食いしばりなどに対する効果が期待できる注射療法です。
「毒素」と聞くと心配されることもあるかもしれませんが、使用される毒素は完全に取り除かれ、製造過程では加熱処理や細心の注意が払われており、感染症の心配はありません。また、直接ボツリヌス菌を注入するわけではないため、ボツリヌス菌感染の心配もなく、安全に治療を受けることができます。
美容関連のクリニックでは主に小顔やしわの改善に使用されることが一般的ですが、歯科医療分野では「歯ぎしり・食いしばり」の症状に対処するために応用されています。
ボツリヌストキシンには筋肉を弛緩させる効果があります。歯ぎしりや食いしばりが強いと、噛むための筋肉である「咬筋」が発達していることがよく見られます。ここでボツリヌストキシンを咬筋に注入することで、強い噛みしめ力を抑制します。これにより、歯ぎしりや食いしばりの改善が期待できます。
ボツリヌストキシン製剤療法後の効果の持続期間は、通常2日から3日で効果が現れ、ピークは注射後約2週間程度です。その後、徐々に効果が薄れ、約3ヶ月から半年ほどで完全に効果がなくなります(※個人差があります)。
効果が完全に消失したら、再度受診してボツリヌストキシン製剤療法を行うと同様に効果が現れます。この治療は繰り返し受けることで持続期間が延びていくことがあり、中には継続的な治療なしでも症状が改善する場合もあります。
ボツリヌストキシン製剤療法後の流れは、当クリニックでは歯ぎしりや食いしばりの症状緩和を目的として行いますが、最終的には口腔全体を改善する治療の一環です。そのため、治療を始める前に問診、検査、診断を行い、歯ぎしりや食いしばり以外にも虫歯や歯周病などがないか確認します。
ボツリヌストキシン治療のステップ
STEP1:問診、検査、診断
患者様が記入された問診票をもとにヒアリングを行い、各種検査・診断を実施して、歯ぎしりや食いしばり以外の口腔の状態を確認します。
STEP2:注射
歯ぎしりや食いしばりの原因となる部位や患者様が気になる箇所に、ボツリヌストキシン注射を施します。
STEP3:メンテナンス
通常、ボツリヌストキシン注射の効果は個人差がありますが、3ヶ月から6か月ほど効果が継続します。効果の状態を定期的なメンテナンスで確認し、必要に応じて安全性を確保した上で継続的に注射を行います。
ボツリヌストキシン治療の注意事項
- ■注射後2日~3日は激しい運動を避けること。
- ■ボツリヌストキシン注射にはヒト血清アルブミンが含まれていますので、宗教的な制約がある方は注意が必要です。
- ■注射当日の飲酒は避けること。
- ■ボツリヌストキシン製剤療法後3ヶ月は妊娠を避けること。
ボツリヌストキシン治療がお受けいただけない場合
以下の状況に当てはまる方は、ボツリヌストキシン治療をお受けいただけません。
- ■妊娠中の方、妊娠している可能性がある方、または授乳中の方
- ■神経筋疾患を有する方(重症筋無力症、Lambert-Eaton症候群、筋萎縮性側索硬化症など)
- ■ボツリヌス毒素や血漿製剤に対する過敏症のある方
- ■神経筋伝達に影響を及ぼす可能性のある薬剤を服用中の方(筋弛緩剤、〈スペクチノマイシン、アミノグリコシド系、ポリペプチド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系〉抗生剤、抗痙攣剤、抗コリン剤、精神安定剤、ペニシラミン、キニジン、カルシウム拮抗剤などで作用増強の可能性)
- ■抗血小板剤、抗凝固剤等を服用されている方
- ■緑内障を患っている方
- ■慢性呼吸器疾患を有する方
- ■65歳以上の高齢者の方
- ■未成年の方
費用
ボツリヌストキシン治療 | 33,000円~55,000円(税込) |
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